医療・防災産業の創生に向けて―協議会2年目の活動

医療・防災産業創生協議会(令和4年度)の活動

弊所では、公共政策志向のシンクタンクとして、ポストコロナを見据え一昨年4月、日本医師会、日本歯科医師会、土木学会等の協力のもとに医療・防災産業の創生に強い関心を持つ有志企業の参画を得て、「医療・防災産業創生協議会」(会長:寺島実郎)を設立し、2年が経過しました。本協議会は、3年計画のもとに官学とも連携しながら民間主導で国土のレジリエンス強化と次世代産業の創生に向けて計画的に活動を推進中です。

令和4年度は、一昨年6月の「医療・防災産業の創生に向けた提言―東日本大震災から10年、新型コロナウイルス対応500日の教訓を踏まえて―」で提示した短・中・長期のうち短期(令和6年度メド)の提言1である先導事業の社会実装に資する観点から、主に有志企業の関係者と協働してシンボリック・プロジェクトの具体化に取組む活動を推進いたしました。

提言1は、高機能・高付加価値コンテナ(可動式)と管理運用システムを開発し、全国の「防災道の駅」や公共施設等への展開を通して、平時の地域力と有事の災害対応力を高めることが必要との内容です。高機能コンテナを活用し、「電気」、「水」、「食料」、「医療」、「トイレ」の5つの機能(ユニット)を眼目に、平時は物販販売(店舗)、休憩所・トイレ、充電スタンド、宿泊施設、イベント用食材の提供など、有事(災害時)は高度な避難所機能(食事を含むQOLの確保)、医療(検査・診察・歯科治療)、トイレ・シャワーの提供などに対応する取組みです。

令和4年度を通じ、主に地元関係者(猪苗代町、福島県、国土交通省東北地方整備局)との協議を踏まえ、社会実装の第1号として防災道の駅に選定された道の駅「猪苗代」における取組みをシンボリック・プロジェクトに位置付け活動中です。

重要な3年目(令和5年度)を迎え、今般協議会のさらなる進展を見据え設立後、これまでの活動状況と今後の活動計画を取りまとめた広報パンフレット「日本は今、新たな産業基盤を創生すべき時 ― 命のコンテナ(技術の集結)プロジェクト」を作成しました。協議会ホームページhttps://www.mdpc.ne.jp/をご参照ください。

コンテナの有用性(コア製品として)

弊所では、2020年(令和2年)のコロナ禍を受け、日本医師会等の協力のもとに2020年11月より安全JAPANプロジェクト(埼玉モデル)として、4台の医療用コンテナを駆使した「発熱検査センター」を2つの医療機関の駐車場(院外)に設置し、現在も運用中です。これにより、「①動線の分離」と「②感染の判別」ができるようになりました。

院内のクラスターの発生を防ぐには、動線分離が最重要課題ですが、病室が減ることによる経営への影響や、そもそも構造上動線を分けることが難しい施設もあります。このため、陰圧装置や空調設備などを備えた高機能コンテナを活用して、院外で発熱患者の検査を行える仕組みを構築しました。

新型コロナウイルス感染症の初期症状はインフルエンザの症状と似ており、発熱してもコロナかインフルかの区別は難しく、確定診断のためには検査が必要となります。このため、受付・患者待機コンテナと検体採取コンテナ(医療従事者のPPE着脱スペース付き)により、インフル・コロナの陽性・陰性を判別することを可能にしました。この結果、医療機関では安全・迅速・低コストでの運用が可能となり、医師や医療関係者から有用との声を多く頂いています。コンテナ式は、埼玉に限らず他の地域でも運用が行われています。

本医療コンテナは、医療機関の敷地内で運用中ですが、このノウハウを活かして弊協議会の参画メンバーと協働で、猪苗代町や道の駅等の協力も得て、可動式の高機能・高付加価値コンテナ(コア製品)を駆使した実証デモを来る6月上旬の3日間、道の駅「猪苗代」で実施する予定です。猪苗代における本取組みがシンボリック・プロジェクトの第1号として地元関係者をはじめ各方面の多くの皆様に有用性を認められることが、協議会活動の今後の進展においても重要なハードルと考えています。実証デモの概要については、下記スライドをご参照ください。

議連との連携

2021年(令和3年)7月、医療・防災産業創生推進議員連盟(超党派)が発足し、当協議会の活動を積極的に支援して頂いています。令和4年12月、議連の齋藤健会長名で「国土のレジリエンスの強化と次世代産業の創生に係る要望書」を国土交通省の斉藤鉄夫大臣に議連会長代行の上田清司参議院議員より手交されました。その後、国土交通省では関係部局での検討を踏まえ、令和5年度道路関係予算概要(令和5年1月)に本要望に関連する一定の取組みが盛り込まれています。

さらに、議連幹事長の古川元久衆議院議員におかれては、本年3月10日に開催された国土交通委員会において、医療・防災産業創生協議会(民間団体)の設立・活動をふれて頂くとともに、民間の動きを側面支援していくことを目的に超党派の議連を発足させたことを強調されました。委員会では、議連幹事長として、東日本大震災の教訓のもとに南海トラフ巨大地震、水害、天災、ウクライナ戦争、感染症など様々な危機に直面する可能性が以前に比べて格段に高まっていることを指摘され、その備えとして国土のレジリエンスの強化と次世代産業の創生に向けて活動を行っている民間団体(当協議会)を支援する観点から、主に予算、制度の2つの側面に関して質問が行われました。本質疑(古川議員)については、以下のURL(インターネット中継)をご視聴くださいhttps://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54402&media_type=

斉藤国土交通大臣をはじめ政府委員からポジティブな答弁があり、中でも6月の猪苗代における実証デモへの関心とともに、デモを踏まえ全国への展開を見据えて、必要な知見等を整理するなどの取組みが行われるものと理解しています。

結び(令和5年度)の活動

弊所会長寺島実郎の主導と参画メンバー企業をはじめ議連、国、自治体等の多くの関係者の支援・協力のもとに、医療・防災産業創生協議会による社会実装プロジェクトも一定の成果を見通せる段階にさしかかっていると受け止めています。これまで積み重ねてきた努力を具体的な結果につなげること(プロジェクト・エンジニアリング)が本年度上半期における最重要な取組みと認識しています。

特に、メンバー企業と協働して取組む猪苗代での実証デモを成功裏に実施することが必要であり、そのためにも猪苗代町をはじめ地元の関係者の理解・協力が得られるよう最善の準備を行う方針です。そして、上半期の活動を踏まえ下半期に向けては、デモの結果を全国に展開できる取組みを進めるとともに、3年計画後の本協議会の活動方針等についての評価が必要と考えています。

こうした状況について、議連総会(5月開催)では、主に実証デモのご案内と高機能コンテナのコンテンツ(一部)のご紹介を行う計画です。また、協議会総会(6月26日開催)では、実証デモの結果報告とともに、今後に向けてご意見等を頂く計画です。

引き続き多くの皆様に本協議会活動へのご支援等を賜りたくお願い申し上げる次第です。