研究協議会の初会合
弊所会長寺島実郎著『ジェロントロジー宣言―「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』(2018年8月、NHK出版)の「あとがき」で、著者は、本書で展開した問題意識に基づいて、本格的かつ体系的なジェロントロジー研究を進めるために「ジェロントロジー研究協議会」を立ち上げ、様々な分野の専門知を体系化し、高齢化社会における「参画のプラットフォーム」を創造する試みに挑戦してみたい、と述べています。
本あとがきでの「宣言」を踏まえ、今般(1月31日)、都内ホテルにて第1回ジェロントロジー研究協議会を開催しました。当日は、企業・団体のトップを中心に11名のコアメンバーのご参加を得て、寺島座長のもとで活発な意見交換が行われました。また、会場には、ジェロントロジー研究会のメンバー、企業・団体トップの代理、地方自治体、プレス関係者など、全体で50名を超えるオブザーバーや聴講者にもご参加を頂きました(下記掲載紙参照)。
東京新聞(夕刊)2019年2月7日 ジェロントロジー研究協議会初会合
研究協議会のフォーメーション
(ミッション)
本協議会は、10月に研究をスタートしました「ジェロントロジーに係る体系的研究会」(本コーナー、No.13(2018.10)参照)の親組織(親委員会)との位置づけですが、高齢者の社会参画のためのプラットフォーム創造の観点から、主に以下の3つのミッションを果たすことを想定しています。
- 新たな社会的事業の事業化に向けた支援(情報・知見の提供、事業への参画等)
- 資格認定制度(インセンティブ等)のオーソライズ(ハイブリッド型シニア観光人材育成プログラム等)
- 新たな社会システムの提示に資する仕組み(制度設計等)の検討と提言(地域(コミュニティ)、市場(マーケット)、法制度等の新たな姿の構築等)
(メンバー)
そして、このミッションを果たすために、本協議会はジェロントロジーに係る体系的な検討・提言等に資するわが国のステークホルダーのキーマンによるメンバー構成とし、産業界、学界、官界(オブザーバー予定)から有識者20名余の方々のご参加を予定しています。このうち、初会合にはコアメンバー11名にご参加頂いたところです。今後、研究協議会は研究会やクラスター別分科会の研究や検討の進捗を見据えつつ、約3か月毎に開催する計画です。また、次回以降の協議会開催に向けて、官界を含めメンバーの拡充に資する活動を推進する予定です。
(組織・機能)
第1回研究協議会の開催において、本協議会の主要なフォーメーションとして使用したスライド(2019年1月時点)の一部を以下にご紹介します。
スライド1:組織・機能(1/2)
組織構造は、研究協議会を主軸に、研究会、クラスター別分科会、事務局で構成されます。事務局は、研究協議会のほか、研究会、クラスター別分科会の諸活動をサポートするとともに、主な調査・研究活動として、事業・人材育成プログラムの企画・調査、広報・ファンドレイジング、国内自治体のほか、海外の多機関との参画・連携事業の推進を行う計画です。加えて、専用Webサイトを通じた積極的な情報発信にも取組む予定です。
研究会は、すでに2回開催し、各メンバーのジェロントロジー研究に係る問題意識や関心の高い社会的事業などへの参画意欲も明らかになりつつあり、今後具体的な社会的シーズや人材育成プログラムの選定に向けたステージへ移行する予定です。そして、次のステージのクラスター別分科会における実証化調査・研究活動に明確に結びつくフィールド(自治体等との連携)を想定した具体的な検討に進む計画です。これらステージ2までが2019年夏を目途に推進する工程です。
第1回研究協議会において、コアメンバーからも多数のコメントが出されましたが、実効性の高い参画プラットフォームや社会的事業の研究や検討に際して、特に供給側と需要側、大都市と地方の高齢化の差異などに十分留意した多面的な調査も必要と考えています。
スライド2:組織・機能(2/2)
(ステージ3のスケジュール)
2019年夏以降については、2020年度からの実行協議会への移行(予定)を見据え、法人化の検討も行う計画です。特に、コアメンバーを中心とする運営委員会における制度設計等の検討においては、各種調査とともに「パブリックオピニオン事業」を通じた高齢者プラットフォームの形成(リアルデータの取得・蓄積等)が重要と考えています。本事業より、主に全国各地域の需要サイドや高齢者の意識・ニーズの実態把握の面で参照予定です。また、都市郊外型の高齢者を対象とした埼玉や多摩地域などにおけるパイロット調査の知見等も活用する考えです。
これら一連の研究・調査活動を踏まえ、2020年度を目途にステージ3(事業育成段階)として複数(観光、金融、美容、農業、医療・健康分野を含む各ジェロントロジー)の「社会的価値創造プログラム(社会実装プラン)」を地方自治体等の参画・協力も得て実施し、課題解決型の社会的事業と参画のプラットフォームの創造に発展させる予定です。
結び
本研究協議会の初会合では、寺島座長のプレゼンテ―ション、事務局の資料説明に対してコアメンバー全員から積極的なコメント等を頂きました。以下に主なキーワードをご紹介します。
- シニア観光人材に必要な資質
- 高齢者のベンチャー意識
- 社会システム変更とプラットフォームのイメージ
- 自治体連携による具体化、パイロットプラン
- 参画のインセンティブ
- シニアのマインドセットとWisdom
- 行動科学的アプローチ
- データとエビデンスの蓄積
- 自分の生き方と社会のあり方
- 都市郊外型高齢者に対する政策不在
- ジェロントロジー学の社会真理
- 消費型参画、市場形成
これらキーワードは、今後の体系的研究・検討において多くの示唆を含むものです。引き続きコアメンバーからの貴重な助言等を頂きながら、本ジェロントロジー研究協議会のミッションを具体的なアウトプットに繋げられるよう、事務局及び関係者一同さらなる研鑽等を積み上げる考えでいます。