これまで、弊所では「中立性」「独立性」という組織の特性を活かし、主に地域密着型金融機関である地方銀行を母体行に持つ「地域シンクタンク」とのネットワーク化に努めてきました。これは、現在、「地方創生」や「SDGs」などの分野で一緒に仕事をしている特任研究員の黒田秀雄氏(元 東京富士大学教授)のアイデアを形にしたものです。
全国の地域シンクタンクとの有機的な連携により、地方創生やSDGsに関する情報の「るつぼ」、「よろず相談所」を目指して、地域シンクタンクをはじめとする多様な関係者による全国的なネットワークの構築に取り組んできました。
ネットワーク構築のきっかけとなったのは、2017年に地域シンクタンク向けに実施した「地方創生・地域活性化・地域魅力化に関するアンケート調査」です。これは、簡単に言うと、地域の事情に精通している地域シンクタンクに対し、「おらがまち」の地方創生事例を紹介していただくという趣旨の調査です。その調査結果を地域シンクタンクにフィードバックし、再度、興味・関心の高い地方創生事例を聞き出し、それらの取組主体に対して弊所職員が取組の詳細をヒアリングし、またその調査結果レポートを地域シンクタンクにフィードバックする…といった形で、情報を集めては分析したり情報を付加して、それをコンテンツとして地域シンクタンクとコミュニケーションを図って参りました。
なお、その後は2020年に「地方創生・SDGsに関するアンケート調査」を実施し、地方創生に関する紹介事例の特徴について定点観測しました(※1)。
そして、その調査結果レポートをテキストとして、「地域シンクタンク・ブロック会議」という交流機会を初めて設け、オンラインではありましたが参加者と顔を見ながら意見交換をしました。参加は14社・団体で、参加者からも他地域のシンクタンクとの交流機会、情報交換の機会は貴重であり、地域シンクタンクのネットワーク化を進めることは有効だといった、ポジティブなご意見をいただきました(※2)。さらに、ご意見の中には、ブロック(地域)ではなく、テーマごとに研修や勉強の機会を設けてほしいとの要望もあったことから、第一弾のテーマを「SDGs(持続可能な開発目標)」に設定し、外部の専門家を招いた研修機会を企画・実施しました。「SDGs」は全4回シリーズで提供しているところですが、それに続いて「DX」をテーマとした研修会も予定しています。その後は、地域シンクタンクの関心事を踏まえながら、地方への人材還流や地域商社などのテーマを設定して企画・実施していきたいと考えています(下図参照)。
地域シンクタンクとのオンラインによる交流機会や研修機会の提供は、初めての試みでした。参加者の反応をみると、県域・圏域を越えたコミュニケーション機会の提供に対しては、ある程度のニーズがあることがわかりました。地方創生といった分野では、様々な地域特性の影響もあって、既に地域で実践されている活動をコピーして、他地域でそのまま展開することはできないかもしれません。しかし、全国から挙がってきた地方創生事例をあらためて眺めてみると、ユニークな視点や考え方、方法論、珍しい連携体制や仕組みなどの特徴を持つ事例も多いことがわかります。簡単に真似できないかもしれませんが、このような先行事例から学ぶ点も多いと思います。
現在、全国40超の地域シンクタンクと関係を構築し、この間、個別のやり取りも増えてきました。例えば、地方創生やSDGsに関するオンライン意見交換や講演、地域シンクタンクの機関誌への記事掲載など、様々お声がけいただけるようになりました。
地域シンクタンクは、所在する地域(縦)の事情に精通しています。このような交流機会をきっかけとして、地域シンクタンク同士(横)の連携につなげていくことで、情報の深化と結合が生まれることに貢献できればと考えています。
※1 調査結果の概要は、弊所ホームページ「主な研究活動」の中の「自主研究『地方創生・SDGsに関するアンケート調査結果』」をご参照ください。(https://www.jri.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/10/chihousousei-SDGs-report2020.pdf)
※2 地域シンクタンク・ブロック会議の開催概要は、弊所ホームページ「主な研究活動」の中の「自主研究『地方創生に関する実践活動及び事例研究』」をご参照ください。
(https://www.jri.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/chihousousei2020.pdf)